クトゥルフ・ダークエイジ顛末 その1

h_nekozaki2005-05-31

 TRPGコンベンションで『クトゥルフ・ダークエイジ』をプレイしてきましたよ!
 時代は西暦1000年頃、神聖ローマ帝国南部のグロースクロイツという都市が舞台です。
 この辺りは、かつて抗争を繰り広げたマジャール人*1と境を隣する、まだまだ不穏な空気が漂う地域。その最も辺境にある村バルトシャッテンからマジャール人が再び蠢動し始めたらしいとの報告を受けて、領主がプレイヤーキャラクター一行を派遣するところからセッションは始まりました。
 ちなみに、プレイヤーキャラクターは以下の4人です。
 
 
【プレイヤーキャラクター】
 
自由騎士 グントベルト3世
かつてオットー1世のもとで武功を上げた祖父を持つ騎士。幼少の頃より騎士道物語を読み聞かせられ過ぎたせいか、頭が騎士道ファンタジーの世界に行ったままになっている。ロングソード&盾のスキルが89%に達する純正バトルクリーチャー。
今回はグロースロイツ城に客分として寄宿していた縁で、領主に探索行を依頼される。
 
家令 セバスチャン*2
グントベルトの家に長年仕える家令。夜な夜な騎士道物語をグントベルトに吹き込んで、騎士道ファンタジーの住人にした張本人らしい。
武者修行のために各地を放浪する主人に付き従いつつ、裏から主人を操っている。
主人が武勲を輝かせることをなにより望んでいる彼は、今回の探索行にも大いに乗り気である。
 
司教秘書官 ウィリアム*3
ラテン語ギリシア語、神学、三科*4、四科*5、はてはオカルト知識にまで手を出している完全頭脳労働者。
グロースロイツ司教の下で秘書として働いているが、いつか上司も踏み越えて教会組織の中でグイグイのし上がってやろうと狙っている。
今回は街の司教ニコラウスに探索行への同行を命じられた。
 
傭兵 シュヴァルツヴァルト
グロースロイツ近郊に広がるシュヴァルツヴァルトを根城にする傭兵団の一員。名前は思いきり偽名っぽい。
一行の中では最年少(15歳)なのだが、物心ついたころから傭兵団の中で暮していたせいか、妙に冷めた視線で物事を見ている。
今回は傭兵団の首領に命じられてウィリアムの警護役になった。
 
 
 上司から命じられてバルトシャッテンにやってきた一行。すぐ目の前まで森が迫る村に着くと、村長と村の司祭が待っていた。
 とりあえず簡単に事情を聞くと、派遣要請をしたのは司祭のマルティンらしい。
 「森の奥でやつらがうごめく気配がするのじゃ! 気じゃ、気を感じるのじゃ!」とか言い出すマルティン司祭。何を言ってるんだこのデブはと思いながらも、もう少し突っ込んだ話を聞く。
 どうもこの村では30年ほど前にも何やら事件があり、その時は一人の騎士が現れて事件を解決してくれたらしい。
 「その様子は教会にかかっているタペストリーに描かれておる」とマルティン司祭。見ると、一人の騎士が従者を従えて、マジャール人の呼び出した悪魔と戦っている情景が描かれている。
 ローランドというその放浪騎士は、村を襲った悪魔を倒すために森に入り、そのまま帰っては来なかった。しかし、悪魔の跳梁もやんだことから、村では騎士を英雄として崇めているという。
 「しかし、最近再びやつらがうごめきだしたらしい。あなたたちに是非とも退治してもらいたい」
 
 他に目ぼしいことも聞けそうにないので、木こりの案内で森へと踏み込む一行。
 森の中を進みながら、木こりにもマジャール人を見たのかと聞くが、彼も見ていないらしい。ただ、「とっつぁまから絶対行っちゃなんねぇ」と言われている場所があるそうなので、そこへ案内してもらう。
 昼なお暗い森の中を進んでいくと、木々の間から何か光るものが見える。さてはマジャール人か? と、剣を抜いていきり立つ騎士グントベルトと家令セバスチャンをなだめて、ウィリアム秘書官は偵察を提案。肉体労働の苦手な彼は、忍び歩きが得意な家令にお願いする。
 そして、木々の間をこっそりと這い進んだ家令が見たものは、世にも奇怪な光景だった。
 
 うっそうと木々が生い茂る森の中、そこには幾多の白骨が散らばっていた。その中に立つ5人の人影と、横たわる2人の影。
 横たわっているのは、胸に剣の突き立ったミイラと、槍の突き立った金髪白皙の男。その回りに立つのは、どうやらマジャール人らしい。
 マジャール人の1人がローブを脱いだ。体中に入れ墨を入れた巨漢で、顔には仮面をかぶっている。もう1人もローブを脱ぐ。こちらは全裸の少女。
 仮面の男は金髪の死体から槍を引き抜くと、少女の胸を突き刺した。声もなく倒れる少女。
 仮面の男は血のしたたる槍を、再び死体に突き立てる。
 
 「さっきまで5人だったのが、今なら4人です!」一行のもとまで戻ってきて、即時攻撃を主張する家令セバスチャン。苦々しげに一瞥したウィリアムは、続きを監視する方が重要だと主張し、再び偵察を命じる。
 
 しかし、儀式はそれで終わりだったらしい。
 マジャール人たちは少女の死体を担ぎ上げると、森の奥へと消えていった。
 
 マジャール人たちを逃がすなど利敵行為だ。上司に報告してやると息巻く家令。それより、とりあえず儀式の現場を調査するべきでしょうと、冷たくあしらうウィリアム。
 白骨の散らばる現場には、まだ2人分の遺体が残されている。一方は剣の刺さったミイラ化した遺体。どうやらマジャール人らしい。もう一方は、槍の刺さった金髪白皙の遺体。まるで生きているようだ。まったく腐敗していない。そして、タペストリーに描かれた騎士と似ているように思われる。
 
 ミイラの胸に刺さるのは、真っ黒で刀身に細かい溝が彫られた奇妙な剣だ。しかし、騎士道一直線のグントベルトとしては気になる。とりあえず抜いてみる。
 そのとたんミイラはボロボロに崩れ落ち、グントベルトは奇怪なビジョンを見た。
 
 黒い剣が目の前のマジャール人に突き立っている。剣を持っているのは自分らしい。そして剣から手を放す。倒れていくマジャール人
 また別のビジョン。宙に浮く黒い剣。刀身に彫られた溝が浮き出し、空中で集まって1つの印を形作る。
 中心に燃える瞳を持つ星型。エルダーサイン*6だ!
 
 プレイヤーたちは、魔物を倒すための魔剣なのかなとボンヤリ想像するが、クトゥルフ世界に危険でないマジックアイテムなど存在しない。現にグントベルトはPOW(精神)原点を1点吸収されている。
 「なんか、槍は抜かない方がよさそうだね」柄まで鉄でできた真っ黒い槍にびびった一行は、即席のタンカに推定騎士の死体を乗っけて帰ることにした。むろん槍は胸に刺さったままだ。
 
 タンカに騎士の死体を乗せた一行が帰って来ると、村は熱狂に包まれた。
 30年前に村を救った勇者の遺体が腐りもせずに、森の中で発見されたのだ!
 「聖者の遺体は朽ち果てることはないという。これは騎士殿が聖者であった何よりの証。さっそく法皇庁に願い出て、聖者認定をしてもらわねば!」
 騎士の遺体を教会に安置したマルティン司祭は、急遽ミサを開く。
 領主と司教への報告を依頼された一行は、ひとまずグロースロイツへ帰還することにした。

*1:マジャール人)後のハンガリー人だけど、この頃はまだ国家として統一されていませんでした。セッションの時代より50年ほど前に、神聖ローマ帝国のオットー1世に敗れて一応の休戦が成立しましたが、キリスト教への改宗も始まったばかりで、ドイツ人にとってはまさに異民族という印象の民族だったようです。

*2:(セバスチャン)ドイツ人っぽくねぇーっ!! と言いたいところですが、やはり執事や家令はセバスチャンでなくてはならないのです。

*3:(ウィリアム)これまたドイツ人ぽくないような気がしますけど、映画『薔薇の名前』のバスカヴィルのウィリアムが元ネタなので。

*4:(三科)文法、修辞、弁証法の3つからなる言語関係の科目。

*5:(四科)算術、音楽、幾何学天文学の4つからなる数学関係の科目。

*6:(エルダーサイン)クトゥルフ世界では有名な、神性の生物を(ごく部分的に)封じる力を持つ印。クトゥルフ神話知識が0%のキャラクターたちには分かりませんが、プレイヤーはセッションが非日常の領域へ踏み込み始めたことをひしひしと感じています。