ドッグ・ハント in ヴァンパイア・ザ・マスカレード

h_nekozaki2005-09-26


 プレイヤー・キャラクターたちの棲む街で、首筋を切り裂かれ内蔵を食われた死体が発見された。
 検屍結果によれば大型肉食獣の仕業だと思われたが、その姿をはっきりと見た者は一人もいない。
 街路には夜ごと内蔵を抜かれた死体が置き捨てられ、住民たちは姿なき肉食獣を「ゴースト・ドッグ」と呼んで恐れた。
 そしてついに血族までが餌食となった。
 「街に我々血族以外の捕食者を入れる余地はない」
 街の公子は警吏とその部下であるPCたちに、肉食獣の処理を命じた。
 果たして「ゴースト・ドッグ」の正体は?
 “獣”に捕らわれたギャンレルか狼憑きか。それとも血族に知られていない謎の超常生物か。
 幼童向けのショートシナリオ。

事件の真相

 とある血族が飼っていたグール犬が「ゴースト・ドッグ」の正体です。
 ゴースト・ドッグは長年主人の「調教」を堪え忍んでいましたが、主人が自分の産んだ仔犬にまで手をかけようとしたときに、ついに反撃の牙をむきました。
 主人の首筋を咬み切って休眠状態に陥れたゴースト・ドッグは、仔犬を養うために夜な夜な街へ狩りに出ています。近くに住む野良猫や野良犬を狩り尽くすと人間の内蔵を胃袋に詰めて持ち帰り、仔犬を養っています。
 しかし、グール犬であるゴースト・ドッグには、肉だけでなく血族の血も必要でした。
 休眠状態の主人の血を舐め尽くしたゴースト・ドッグは、肉だけでなく血族の血も求めて夜の街を徘徊するようになっています。

主なNPC

ゴースト・ドッグ(グール犬/♀):

 チルトンが何十匹もの失敗の末に育て上げたグール犬。非常に賢く、〈隠惑〉の初歩や血族の血をかぎ分ける能力を身につけている。

チルトン(マルカヴィアン/♂/故人):

 マルカヴィアンのドッグ・ブリーダーで、ゴースト・ドッグの飼い主。ゴースト・ドッグの仔犬を取り上げようとして咬み殺された。

警吏補佐(氏族任意/性別任意):

 PCたちの直属の上司。汚れ仕事の指揮を執る苦労人。(場合によってはハートマン軍曹並の鬼上司でもいいかも)

オールド・ジョン(ワーウルフ/ボーンノウアー/♂):

 街に棲む小規模なワーウルフ集団の顔役。白髪の小柄な老人だが、スラムのことならネズミの穴まで知っていると言われる。

シナリオの推移

 シナリオの目的は、ゴースト・ドッグの捕獲もしくは殺害と、その住処を探し出すことです。両方の目的を達成しない限り、警吏補佐は任務の続行を命じます。

 ゴースト・ドッグは飼い主のチルトンの屋敷を住処にして、狩り場にしているスラム区画や公園へと出ていきます。
 PCは目撃情報や警察の捜査記録などから情報を取得したり、死体発見現場の捜査などをしながら、ゴースト・ドッグの足取りを追うことになるでしょう。
 追跡されていることに気がついた場合、ゴースト・ドッグは仔犬のいる屋敷には戻らずに追跡者をまこうとします。ゴースト・ドッグと追跡者の競争判定で解決してください。
 どうしても追跡者を振りきれない場合、ゴースト・ドッグは追跡者を待ち伏せて反撃しようとします。
 もしPCたちが住処までやって来て、ゴースト・ドッグが生きている場合は、仔犬を守るために死ぬまで戦います。
 仔犬たちには戦闘能力は全くありません。

覚え書き

 ごくシンプルなシナリオになると思うので、PCたちの日常などを描写したり、PC間の関係を膨らませるようなロールプレイを混ぜたりしてもいいでしょう。
 ストリートの路面をかぎ回った末に、グール犬との戦闘に入るといった流れになると思いますので、上流階級につながるようなキャラクターは見せ場を作りにくいかも知れませんが、後方支援(情報収集や警察の配置への介入)で他のPCの判定を有利にするなどの渋い役回りをやってもらいましょう。

 クロスオーバーをするSTなら、ワーウルフたちをミスリードとしてちらつかせ、よりシナリオを複雑で危険な香りのするものにもできるでしょう。
 場合によっては街に棲むガルゥたちと接触して、今回の事件とは無関係かどうか確かめなくてはならないかも知れません。
 血族と人狼の会見は、シナリオに緊迫したシーンを提供してくれるでしょう。