ジャン覚醒 in D&D3e

「俺たちは、地底の溶岩溜まりを決壊させて大地震を引き起こし、この地域一帯のヤツらを皆殺しにしてやるつもりだった。
実現すれば、我が神エリスヌルはさぞかしお喜びになったことだろう」
恐慌と虐殺の神であるエリスヌルの神官ルームドは、後ろ手に縛り上げられたまま不敵な笑みを浮かべた。
「さ、すべてを話したぞ。解放してくれ」
尋問をしていた聖騎士イリアの顔を見上げ、居直るように胸を反らす。
瞬間、その胸に白刃が突き立った。
「次はいいヤツに生まれてくるんだな」
イリアの脇から躊躇いもなく匕首を送り込んだジャンは、まっすぐに刃を引き抜いた。
口の端から一筋の血を流し、声もなくうち伏すルームド。
「わ、わわわ……」
同じように後ろ手に縛り上げられた魔術師エングリムは、血溜まりを広げていく仲間の身体から離れようと足をあがかせた。
「何をするんですか!!」
「んー、なんか用済み感が漂ってたからー。それに聞くべきことは聞いたし」
丹念に匕首の血のりをふき取りながら、ジャンは答えた。
「それに、どのみちコイツは生かしておくわけにはいかなかったんじゃない?」
パーティの面々は、ジャンがかいま見せた一面に戦慄していた。


今日はまたまたD&D3eセッションの日でした。
が、ついにジャンが見せた素顔! プレイヤーの僕もビックリです。
恐るべき一面を曝して見せたジャンの明日はどっちだ!? 単なる若年寄だったのに、徐々に個性が出てきたような気もします。それも強烈なヤツが。

パーティメンバー

アーキー(ファイター&クレリック/ノーム/♂/NPC
アルザスクレリック/人間/♂)
イリア(パラディン/人間/♀)
ジャン(ウィザード/人間/♂)
ディラン(モンク/人間/♂)
シェラザック(ブロンズドラゴン/♂)


デズモドゥの街へ

さて、前回デズモドゥの山賊を倒して、穴蔵からデズモドゥ一般人を助け出したPC一行。彼の案内で溶岩の流れるクレバスだの毒ガスの出る洞窟だのを踏み越えて、ついにデズモドゥの街に入ります。
デズモドゥの街は小さなものでしたが、巨大な石筍の上に張り付くように建つ家々はなかなかの奇観です。
デズモドゥたちに混じって地上から来たパーティもいます。4人組のパーティは、どうやらPCたちと同じようにどこぞの街から調査に来た様子。
とりあえず、商人たちから聞き込んでいたアデプト*1のバーンダーさんのところにゴー。バーンダーさんはベスペリアンというデズモドゥの神を祭る神殿、巨大なクレバスの中程に掘られた石窟*2にいました。
「ワレワレは、地上人である」
と、胸を拳で叩いて声を震わせながら挨拶する一行(嘘)。バーンダーさん、地上の共通語が話せる*3ようで助かりました。
実は、最近地震が頻発するんで、その原因を探りに来たんですよー。というと、「実はのう」と事情を話してくれるバーンダーさん。
なんでも、かつてデズモドゥは、ドロウエルフ*4と抗争を繰り広げていたそうです。あまりに長い抗争に疲れたデズモドゥは、溶岩流を使って戦局を一気に打開するれを変えて作戦を立てました。
で、当時の偉大な魔術師たちが力を結集して溶岩の流れを変えてドロウエルフの都市を壊滅させ、ついでに自分たちの街も囲んで閉鎖したそうです。
「そうしておよそ300年の年月が過ぎたのじゃが、先ごろ起こった地震でまた溶岩の流れが変わってしまってのう。この街は再び外界と繋がることになったんじゃ」
また、デズモドゥは隣の洞窟に住むサラマンドラ*5に鉱石を供給する見返りに金属加工品を受け取っていたそうですが、彼らのもとに赴いた使節がいまだに帰ってきていないとか。
いろいろ心配事があるバーンダーさんですが、まだなにか言っていないことがあるようです。
それに気づいたPCにさんざんせっつかれた挙げ句、心配事を漏らしました。
「実は、せき止めていた溶岩流があふれ出しそうなんじゃ」
そいつは一大事じゃないですかと、ベスペリアン神殿の書庫にある書物を漁って溶岩流について調べる一行。結果、2カ所の地点で溶岩流がせき止められたことが分かりました。
300年前、デズモドゥの魔術師たちは、溶岩流を堰き止める堤防を築いたそうですが、流れが変わったせいで、逆にそれがアダになっているようです。このままだと溶岩があふれ出して、どんな被害をもたらすか分からない。堤防のひとつはサラマンドラが築いた要塞の地下、そしてもうひとつはこの神殿がある巨大なクレバスの下にあるそうです。
「しかし、サラマンドラは灼熱を喜ぶ種族だ。堤防を壊せば溶岩を溜めておけなくなる。壊すことには同意せんじゃろう。彼らとの協定がある以上、ワシらも無理強いするワケにはいかん」
とりあえず、サラマンドラの要塞に行った使節がどうしてるかを見てみましょうと、《スクライング》の呪文で遠視を試みる魔術師ジャン。
魔法で鏡に映し出された使節たちは、なんとサラマンドラの工房で奴隷のようにこき使われています。
「なんということじゃ!」と驚くバーンダーさんの後ろで、内心『しめしめ。相手が先に協定破りをしてきたんだから、痛めつけてやってもいいよなぁ』と思いつつ、「お気の毒です」とお為ごかしを言うジャン。
こうなったらサラマンドラの要塞に攻め入って堤防をぶっ壊し、ついでに使節も救出してくることに話が落ち着き、ジャンと神官アルザスは必要そうなものを買い出しに《テレポート》で地上まで帰ることにしました。
その間、聖騎士イリアと格闘家ディランは、バーンダーさんにあてがってもらった部屋で待機。ディランは時間が空いたのでバーンダーさんから地下共通語の基礎会話を習うことにしました。

NPCパーティの襲撃

買い出しに行ったジャンとアルザスが帰ってくるまでのあいだ、ディランはバーンダーさんについて地下共通語・アンダーコモンのお勉強。
バーンダーさん
「『タッカラプト・ポッポルンガ・プピリット・パロ』
これは、『出でよ神龍、そして願いを叶えたまえ』という意味じゃ。
プリーズ・フォロー・ミー
ディラン
「『タッカラプト・ポッポルンガ・プピリット・パロ』!」
そんな熱心なお勉強中、とつぜんジャンが駆け込んできます。
「大変だ! ちょっと来てくれ!」
何ごとだと驚くディランだが、よく見るとジャンが変。というか、まったくの赤の他人です。
かなり巧妙に変装しているようですが、鋭いディランの目は誤魔化せません。「うん分かったー」と言いながら、ニセジャンの顔面に右ストレートを叩き込むディラン。すかさず組み付きに移行し、あっさりと不審者を捕らえてふん縛ってしまいました。
何ごとかとやって来たイリアと一緒に変装を剥ぐと、先ほど出会ったNPCパーティのひとり、ルームドと名乗った男です。
とりあえず武装解除をして持ち物検査をする2人。すると何やら手にハンカチっぽいものを持っているのを発見。
イリアが取り上げて広げようとすると「やめろ! 広げるな!」と叫ぶルームド。構わず広げると、なんと中からNPCパーティの残り3人が出てきたのでした!
「ルームドったら、しょうがないわねぇ」と殴りかかってくる3人。NPCのメンバーは下記の通り。


★ルームド(クレリック/人間/♂)
★デルカ(ファイター/ハーフオーク&ハーフドラゴン/♀)
★エリナ(ファイター&ローグ/ハーフエルフ/♀)
★エングリム(ウィザード/エルフ/♂)


ちなみに彼らのレベルは13レベル。ジャンとアルザスが抜けてディランとイリア、ドラゴンのシェラザックしかいない状態では苦戦は免れないかと思いましたけど、NPC側もルームドは縛られているため戦闘不能でしたし、乱戦になれば格闘家と聖騎士にドラゴンで構成されるPCの方が有利だったようで、数ラウンドの戦闘の後、エングリムの《テレポート》でNPCパーティは撤退していきました。
しばらくして帰ってきたアルザスとジャンに事情を話し、どうするか作戦を練ります。

PCの反撃

なんでこちらを襲ってきたのか分からないものの、このまま連中を放置しておくワケにはいかないと結論したパーティの面々。
ふたたび《スクライング》の呪文を使ってNPCパーティの行方を探ります。鏡を通してみると、どうやら彼らは地上に逃れ、傷の手当てなどをしている様子です。
攻撃するなら今だと言うわけで、《テレポート》でNPCを襲撃。《スクライング》で見られていることに気づいていたNPCパーティもしっかり迎撃体勢を整えていて、一気に乱戦になりました。
13レベルパーティとの戦いは激しく、特にエングリムの放つ高レベル呪文に石化させられたりと、かなりの苦戦を強いられたものの、デルカとエリナを倒し、ルームドとエングリムを捕虜にすることに成功しました。
で、後はお決まりの武装解除と尋問。
彼らは恐慌と虐殺の神エリスヌルの神官であるルームドに率いられた邪悪な冒険者の一行でした。彼らは溶岩流の影響で大崩壊が起こることを知って、大崩壊に合わせて儀式をおこなうつもりだったのです。そして、もし大崩壊を防ごうとする勢力が現れたら、そいつらを排除するつもりでもいました。
なるほど。君たちの言わんとすることはよく分かった。と、ジャンは流れるような動作でルームドの胸に剣をぶち込みます。
呆気にとられる仲間たちに、「んー、なんか用済み感が漂ってたから」と言い放つジャン。
あまりの展開にガタガタ(((( ;゚Д゚))))ブルブルするエングリムの肩をポンと叩くアルザス。ビクリと肩を揺らすエングリム。
「こんなパーティに加わってないで、心を入れ替えたらどうかね。
君、旅はいいぞぉ」
笑みを浮かべて諭すアルザスの言葉に、エングリムは頭をガクガクさせながら頷きました*6
そんなこんなで、呪文書を取り上げられ*7アルザスから《アトーンメント》*8の呪文を受けて改心したエングリムは、ファラングン*9八十八カ所巡りをお遍路するよう命じられた上で解放されたのでした。

(以下、次セッションへ)

『現われた地下都市』第2回エンディングテーマ


悪行がいっぱい
作詞:イリア・メリュー 作曲:鈴木キサブロー


厚い呪文書の中に 隠れて 悪行がいっぱい
無邪気な笑顔とともに 浮かぶよ 血染めのメモリー
因果は無限のつながりで 果報を 思いもしないね
堕地獄の危険は 瘴気を巻いて 君を包んでいた


Evilの階段昇る 君はまだNeutralさ
血まみれの 両手は きっと 洗えば落ちると 信じてるね
見込み違いと いつの日か 分かる時がくるのさ

*1:アデプト:正式な魔術師や神官などに対しての呪い師のような立場のクラス。限定的な信仰呪文に通じている。

*2:巨大なクレバスの中程に掘られた石窟:亀茲国が作った仏教石窟群みたいな感じだろうか。

*3:地上の共通語が話せる:つい最近まで閉鎖空間になってて外界とは没交渉だったのに、どこで習ったんだろう。

*4:ドロウエルフ:地底に住んでいる黒いエルフ。地下世界で最大最強の種族。着てる衣装がボンテージっぽかったりゴスっぽかったりする。

*5:サラマンドラ:別名火トカゲ。火の次元界を故郷とする種族。凶暴で好戦的だが、高度な鍛冶の腕を持っている。

*6:頭をガクガクさせながら頷きました:落としのテクニックに「いい刑事と悪い刑事」というのがあるそうだが、これは「いい刑事とものすごく悪い刑事」のような。

*7:呪文書を取り上げられ:没収したのはもちろん、ジャン。八十八カ所巡りを成し遂げた暁に返還する約束になっている。ジャンはその間に、知らない呪文を全部書き写させてもらうつもりでいる。

*8:《アトーンメント》:自分と対立する属性を持つキャラクターの属性を、自分と同じ属性に変える効果を持つ呪文(ex.GoodのキャラクターがEvilのキャラクターにかけて、Goodにならせる)。

*9:ファラングン:幸運・旅などを司る神。その司祭は大抵旅から旅の漂泊を続ける。ちなみに、ファラングン八十八カ所などというものは、公式設定にはない。