登場! ファイブニキータ! in D&D3.5e

h_nekozaki2007-12-08


愛と美と情熱の女神スーニー信徒の朝は、清らかな水で身を清めることから始まる。
新しい一日を汚れ一つない身体で迎える準備ができたら、次は化粧。入念な身繕いはスーニー信徒にとって神聖なる儀式だった。

「いい、みんな!? メイクが崩れていたら勝てる戦いも勝てないよ!
お化粧は入念に! チェックも大切だからね!」
「「「おー!」」」
聖騎士エズメラルダの張りのあるアルトに、メイクを施しながら他のメンバーが応える。
「あ、あの……姉さん……」
鏡を見ながら忙しく刷毛を動かしているエズメラルダに、弟のキートン――パーティ唯一の男で、唯一の非スーニー信徒だ――がおずおずと声をかける。
「僕たちは司祭の依頼でドレリンの渡しが危険にさらされてないか見に行くんだし……あの……化粧は早めに切り上げて出発した方がよくない、か・な?」
刷毛を止めずにエズメラルダが問いかける。
「……キートン……ドレリンの人々は、私たちに何を求めてると思う?」
「そりゃ、もちろん一刻も早い救援――」
「違うわ」
刷毛をおろしたエズメラルダは、ゆっくりと弟に向きなおった。
「いい? ドレリンの人たち……いいえ、すべてのオーディエンスが私たちに求めているのは、ドラマ……そう、ドラマなのよ。
自分たちの暮らしを脅かす山賊たち。奪い取った武器防具で身を固めたゴロツキと自警団の汗くさい戦い。
そこに颯爽と登場する、愛と美と情熱に満ちあふれた乙女たち! それを目にしたとき胸にわき上がる歓喜! これこそが本当に私たちに求められているものなのよ!
彼らを救うのは、決して旅塵に汚れた冒険者たちであってはいけないの。そんなこと、ドレリンの人たちもスーニー様も望んでいないわ。
私たちはスーニー様の美しさの代行者。いついかなる時も美しくなくてはいけない。だからメイクはどうしても必要なの。
分かってくれた?」
エズメラルダの目は超マジだった。ガンぎまりだった。
「え……あー、うん、まあ」
「エズメー、ちょっといいー?」
アイブロウを終えた魔法戦士のライラが声をかける。
「頬のチークなんだけどさー、ちょっと雰囲気変えたいんだよねー。どうしたらいいかなー?」
「ライラ、あなたは目鼻立ちハッキリしてるんだから、そんなに濃くしなくていいのよ。
もっとヌーディーなメイクにして、頬をふっくら見せるように入れなくちゃ。刷毛貸して……」

一人取り残されたキートンは、いつから姉はあんなになっちゃったんだろうと思いながら、とっくにまとめ終わった荷物のところに戻っていった。


「私たち愛と美と情熱のために戦います。
たとえそれが命をかける戦いであっても、私たちは一歩も引きません!
それがファイブニキータなのです!」

というわけで始まりました、D&D3.5e用既製シナリオ『赤い手は滅びのしるし』。
新たにプレイヤーが招集され、キャラメイクがおこなわれました。
そしてフタを開けてみたら、愛と美と情熱の女神スーニーの信者の女の子4人に男1人という編成に。
いろんな意味でヤバいキャンペーンの始まりです。
そして、D&D3eのプレイリポートを放置したままでの新章の始まりでもあります。
とりあえず、今回のプレイヤーキャラクターたちのご紹介。


冒険者たち

【エズメラルダ・ブランディバック/ローグ1 パラディン4/ハーフリング/♀】

正直で真っ当な盗賊として精進していたはずがスーニー女神の魅力に開眼。ピンク地に白フリルの痛アーマーを着こなす聖騎士に華麗に転身。
得意技は騎乗突撃。白地にピンクのハート模様のランスを喰らうと色んな意味で痛い。


【エラネッセ/ウィザード5/エルフ/♀】

御年300歳オーバーの美麗魔術師。悩み抜いて用意した呪文の当てをはずされては泣きながら矢を打つ日々。ドンマイ。
スーニーギャルズの中では比較的まともなファッションセンスと精神構造の持ち主。


キートン・ブランディバック/ウォーロック1 ローグ4/ハーフリング/♂】

目からビームを出したり壁をスパイダーウォークしたりする怪しさ120%盗賊。
エズメラルダの弟なのに彼には悪魔だか妖精だかの血が流れている。たぶん腹違いか拾われ子。
唯一の男にして非スーニー信者なのでパーティ内では浮きがちだが、それを彼は悲しんではいないだろう。


【ナイアラ/クレリック4/キャットフォーク/♀】

愛と美と情熱の女神に仕える猫人間という、ある意味すごくツボを抑えた神官。
素早い身のこなしで戦場を駆けめぐり、仲間を回復しまくるデキる衛生兵。
でも名前は「這い寄る混沌」ナイアラトテップから。


【ライラ/ダスクブレード5/人間/♀】

巨人の血を引くマッチョビューティな魔法戦士
その巨体でスパイクドチェインを振り回し、周りの敵をちぎっては投げちぎっては投げする係。
善属性のメンバーが多いので、代わりに報酬の交渉とか俗っぽい発言をする係でもある。


定吉さん/ゴールデンリトリバー/♂】

エズメラルダの乗騎。パーティ中もっとも穏やかな気性の持ち主だが、その場の気分で千早だのチョビだの適当に呼ばれる悲哀。
そして、『あずまんが大王』に出てくる犬は「忠吉さん」であることに今さら気づいた。ギャフン。